大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和23年(オ)104号 判決 1948年12月24日

主文

本件上告を却下する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

職権により本件上告の適否を調査するに、昭和二三年七月二八日福岡高等裁判所が言渡した原判決が上告人等に対し送達せられたのは同年八月二一日であつて、又本件上告状が原審裁判所に提出せられたのは、右送達の日から二週間を経過した後の同年九月七日であることが記録上明白である。しかして、本件記録によれば、原判決の言渡後、昭和二三年七月三一日、上告人の相手方(被上告人等の被承継人)松倉民雄が死亡したこと及び上告人は右民雄の死亡により本件訴訟手続が中断したものとして同年九月七日原審裁判所に対し、本件上告状の提出と共に受継の申立をしたことが認められる。しかし、記録中の訴訟代理委任状(記録九丁及び八一丁)によれば、右民雄は、本件の第一審及び原審において、弁護士川野浩を訴訟代理人に選任し、同人に対し本件についての通常の訴訟委任の外、なお民事訴訟法第八一条第二項に掲げる事項についての特別委任をもなしていたことが明かである。しかして右のような特別委任を受けた訴訟代理人は、その事件につき、単に上告提起の権限のみならず、相手方の上告に対する応訴、その他上告審における訴訟追行に必要なる一切の訴訟行為をなすべき代理権限を有すること勿論であるから、前記松倉民雄より訴訟委任を受けた川野浩は、本件につき、原審及び上告審を通じ、右民雄の訴訟代理人たる地位を有することが明白である。しかも民事訴訟法第八五条によれば訴訟代理権は当事者の死亡により消滅するものではなく、且つ同法第二一三条により、訴訟代理人のある間は、当事者が死亡しても訴訟手続は中断しないのであるから、本件訴訟手続は、前記松倉民雄の死亡により中断を来さなかつたものというべきである。したがつて、本件受継の申立は失当でると共に、原判決に対する上告期間は、その進行を停止しないこと勿論であるから、前記のように、原判決その送達後、上告期間たる二週間の不変期間経過後提起せられた本件上告は不適法であつて、その欠缺を補正することができないから、これを却下すべきものである。よつて民事訴訟法第三九六条、第三八三条、第九五条及び第八九条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例